子ども向けプログラミング検定とは
2020年度より、小学校でプログラミング教育が必修化されたことにともない、学内だけでなくプログラミング教室に参加したり、自宅で自主的に学習したりする子どもが増えています。
子ども向けのプログラミング学習は、ゲーム感覚でできるものもあり、ある程度の達成感を得てモチベーションを上げられる仕組みになっています。とはいえ、自分にどのくらいの実力があるかを客観的に判断するのは難しいといった状況でしょう。
そこで注目を集めているのが、子ども向けのプログラミング検定です。今回は、検定の内容やメリットはもちろんのこと、プログラミングが必要となっている背景などの基礎知識も含めて解説していきます。
そもそも、なぜプログラミングが注目されているのか
そもそも、なぜプログラミングが小学校の必修課題になるほど注目されているかについての大きな理由としては、「これからの社会に対応できる人材の育成」が挙げられます。
文部科学省の『小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)』によれば、近い将来、ロボット技術やAIが発展することにより、社会に大きな変革が起こることが予想されており、従来どおりの教育を受けた人材では通用しなくなってしまうのではないかといた懸念があるそうです。
この懸念を解消するために、同資料では「現在、社会や産業の構造が変化していく中で、私たち人間に求められるのは、定められた手続を効率的にこなしていくことにとどまらず、自分なりに試行錯誤しながら新たな価値を生み出していくことであるということ、そして、そのためには生きて働く知識を含む、これからの時代に求められる資質・能力を学校教育で育成していくことが重要である」としています。
この「定められた手続を効率的にこなしていくことにとどまらず、自分なりに試行錯誤しながら新たな価値を生み出していく」人材を育てるための手段として採用されたのがプログラミング教育なのですが、プログラミング教育とは、コードを書いてプログラミングを組むなどのスキルを育成するものではありません。
同資料でも、「プログラミング教育とは、子供たちに、コンピュータに意図した処理をおこなうよう指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育むことであり、コーディングを覚えることが目的ではない」としています。
プログラミング教育におけるプログラミングとは、あくまで手段のひとつであり、最終的な目的としては、プログラミングをする過程で育成できる、複雑化した事象から的確な情報を読み解く力を身につけ、論理的に考えたり、創造的な思考ができるような人材を育むことを目的としているのです。
現在、プログラミングは小学校はもちろんのこと、中高大学生や社会人まで幅広く学んでいます。これからの社会では、プログラミングのスキルや思考方法ができることはますます重要になっていくことでしょう。
そのため、小さなころからプログラミング(思考)を学んでおくことは、将来的に大きな資産になると考えられます。
出典:小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)
子ども向けプログラミング検定のおすすめは「ジュニア・プログラミング検定」
プログラミングが注目されている背景や必要性について紹介したところで、本項からは子ども向けプログラミング検定について解説していきます。
子ども向けのプログラミング検定の現状としては、まだまだ数が少ないを言わざるをえません。有名どころでは「Java™プログラミング能力認定試験」や「情報システム試験(J検)」などは、子どもには難易度が高く、中高生以上向けといった検定です。
本コラムは主に小学生向けのプログラミングを対象としていますので、合致するのは日本商工会議所・各地商工会議所の「日商プログラミング検定」のENTRYレベルと、株式会社サーティファイが開催している「ジュニア・プログラミング検定」くらいのものでしょう。
この2つのうちでも、よりおすすめなのが、「ジュニア・プログラミング検定」です。以下の項目で応募要項や流れなどを解説していきます。
ジュニア・プログラミング検定とは
「ジュニア・プログラミング検定」とは、上述したとおり株式会社サーティファイが開催している子ども向けプログラミング検定です。同社はプログラミングのほかにもコンプライアンスや著作権など、数多くの検定を手掛けています。
公式サイトによると、「プログラミング的思考力を定着させ、その知識を土台とした創造の可能性を広げる。また、子ども達の成長を段階的に評価することで、自信や達成感につなげ、更なる目標に挑戦する意欲を育てる」とされていて、まさに小学校教育における「プログラミング思考」の育成と合致した検定だといえるでしょう。この点も、本検定がおすすめできる大きな要因です。
ジュニア・プログラミング検定の応募要項や受験までの流れ
ジュニア・プログラミング検定は、ビジュアルプログラミング言語の「Scratch」を用いておこなわれます。
「Scratch」とは、アメリカのMITメディア・ラボで作られたプログラミング言語で、誰でも無料で使用することができます。対象年齢は8〜16歳となっており、今では世界中の教育機関で採用されています。
大きな特長としては、ドラッグ&ドロップの操作だけでプログラムを組むことができ、プログラミング言語やコーディングの知識を必要としない点が挙げられます。
くわしくは、「スクラッチ(SCRATCH)とは? 使い方やメリット、実施事例などを紹介」のコラムに記載されていますので、あわせて参照してみてください。
さて、ジュニア・プログラミング検定は、この「Scratch」を使用するわけですが、レベルは以下の4つが設けられています。
・Entry(4級)
・Bronze(3級)
・Silver(2級)
・Gold(1級)
受験資格はとくに設定されておらず、自分のレベルに応じて受験可能です。
合格基準としては、以下の3項目が設けられています。
・得点率60%以上
・問題文であたえられた条件を満たしたプログラムが組まれていること
・自由なアイデアが盛り込まれていること
受験の流れとしては、公式サイトの受験会場検索から会場を検索し、希望会場に連絡をして、試験日時・受験申込期間・受験申込方法・受験料支払方法・受験結果受領方法などの詳細を確認して本申込みとなります。
受験料はEntryが2,400円、Bronzeが2,600円、Silverが2,800円、Goldが3,000円となっています。
結果は約1ヶ月程度で発表され、合格者には認定証が授与されることとなります。
ジュニア・プログラミング検定では、どのような出題がなされるのか
ジュニア・プログラミング検定では、上述したとおりEntryからGoldまでの4つのレベルが用意されています。さきほど「Scratchはドラッグ&ドロップの操作だけでプログラムを組むことができ、プログラミング言語やコーディングの知識を必要としない点が挙げられます」と記しましたが、ジュニア・プログラミング検定では、ブロックの知識のみだけではなく、ゲームや物語、アニメーションなどの作品を時間内に制作するといった、基礎的なスキルよりも一歩踏み込んだ出題がなされます。
レベルによって問題・難易度は異なりますが、たとえばEntryレベルでは「入門レベルの特定の条件や筋道を用いた論理的思考ができる。また、条件分岐や繰り返しなどのスクリプトを使って、一つまたは二つのスプライトを連動させたScratchプロジェクトを作成することができる」ことが要求されます。
またGoldでは、「複数の条件や筋道を組み合わせた論理的思考ができる。また、複数の条件分岐や演算、入れ子構造のスクリプトなどを使って、様々なスプライトを連動させたScratchプロジェクトを作成することができる」ことが合格ラインとされています。
実際に制作する作品例は、公式サイトにて紹介されていますので、予め確認しておくのがおすすめです。ちなみに、出題で使われているブロックなどをダウンロードして使用することも可能ですので、教材として使うのもよいでしょう。
ジュニア・プログラミング検定のメリット
ジュニア・プログラミング検定を受験するメリットとして大きなものとしては、自信や達成感につながることが挙げられます。子どもはどうしても飽きやすいため、学習を続けるためのモチベーションを保ち続けるのが難しく、飽きて辞めてしまえば自信や達成感を得ることができません。
そこで、プログラミング検定という目標を掲げ、受験して合格すれば自分に実力が見についていることもよくわかりますし、自己肯定感も増します。またこのような成功体験は、プログラミング以外の学習をする際にも大いに役立つことでしょう。
上記は心情的なメリットですが、プログラミング検定には実利的な利点もあります。そのなかで特筆すべきものが、入試の際に合格判定が優遇されたり、実務試験免除を得たりすることのできる「入試優遇校」があることです。
ジュニア・プログラミング検定であれば、埼玉県の大妻嵐山中学校、神奈川県の相模女子大学中学部や東京都の八王子実践中学校などが合格者の優遇措置を設けています。それほど多くの学校が導入しているわけではありませんが、今後増加することも予想されますし、優遇されなくとも英検や漢検のようにプロフィールに記載できる点は大きな強みになるのではないでしょうか。
学校の授業だけではプログラミング検定を受けるのは難しい
ここまで解説したとおり、プログラミング検定には必要性もあり、さらにさまざまなメリットもあります。しかし、たとえば小学校のプログラミング教育を受けただけで受験に臨むのは、いささか難易度が高いのが現実です。
というのも、小学校でのプログラミング教育では、Scratch以外にもさまざまなプログラミング言語が用いられています。また、そもそも「プログラミング思考を学ぶ」ことが重要視されていますので、プログラミングスキルを育むようなカリキュラムは採用されづらいという理由があるからです。
もちろん、プログラミングスキルに触れるようなカリキュラムもあります。たとえば、東京都の杉並区立西田小学校では、Scratchを使って「正多角形をプログラムを使ってかこう」という授業をおこなった事例があります。これは「どのようにプログラムを書いたら作図できるか」を考えてプログラムを組むという内容ですので、比較的プログラミング思考のほかにも、スキルを学べるケースだといえるでしょう。
いっぽうで、横浜市の横浜市立白幡小学校では、「電気を無駄なく使うための工夫を考えよう」というテーマで、ウェブブラウザでプログラミングができるmicro:bitという教材を使用し、電気の変換についての理解を深める授業がおこなわれました。
このように、使う言語や内容もバラバラですので、網羅的な学習はできるものの何かひとつの言語に絞ってしっかりと学ぶといった方向性は取られていないのが現実です。また、教育機関によって内容はもとより、指導する教員の知識やレベルが異なることもあります。
そのため、プログラミングスキルを身に着けたり、より深くプログラミングや論理的思考を身につけるためには、プログラミング教室に通う必要性があり、その成果としてプログラミング検定を受けるといった流れも選択肢に入ります。
子ども向けプログラミング教室はオンライン・オフライン問わず多岐にわたりますが、このコラムが掲載されている「子どもプログラミング教室egg」も、子ども向けのプログラミングコースを用意しています。
さらにeggでは、レッスン内で検定対策授業をおこなっており、2020年の夏に7人の生徒がジュニア・プログラミング検定に挑戦し、全員が合格するといった実績もあります。
またeggは、ジュニア・プログラミング検定の試験会場に認定されていますので、プログラミング学習から検定受験まで一気通貫でおこなうことが可能です。子どもは環境の変化に敏感ですから、いつも受講している校舎で安心して受験できるのは、認定試験会場で学ぶ大きなアドバンテージだといえるでしょう。
ほかにもさまざまな授業や取り組みをおこなっていますので、くわしくはスタッフブログを参照してみてください。
参考:プログラミングスクール-egg スタッフブログ
出典:正多角形をプログラムを使ってかこう(杉並区立西田小学校) | 小学校を中心としたプログラミング教育ポータル
出典:電気を無駄なく使うための工夫を考えよう(横浜市立白幡小学校)
はじめてパソコンやタブレットなどに触れる場合でも、プログラミング教室はおすすめ
Scratchをはじめとして、現在では無料で使えるプログラミング言語も多数登場しており、さらにネット上にもたくさんの情報が存在しており、低コストで容易に家庭学習が可能です。
とはいえ、たとえば保護者側に一定以上のプログラミング知識がなければ「今の学習状況の子どもに、どのような教育ツールを与えるべきか」という判断は難しいですし、またインターネットを使って学習するからには、有害コンテンツなどに遭遇しないための基本的なネットリテラシーは必須です。さらに、PCやタブレットの操作などをわかりやすく、論理的に、子どもが飽きないように教えるのは教育者でも難しいものです。そのスキルや知識をもっている方は決して多くはないでしょう。
そのため、プログラミングに触れたことがない子どもやPCやタブレットを使ったことがない子どもは、初心者向けのコースが用意されたプログラミング教室に通うのも有効な手段であるといえます。
たとえば、eggでははじめてパソコンに触れる子供向けとして「たまごコース(入門コース)」が用意されていて、Scratchを利用して簡単なプログラミングを作成する「ひよこコース(基本コース)」、プログラムをいちから設計・構築する「にわとりコース(上級コース)」の3コースを習熟度に応じて受講することができます。詳細に関しては、「プログラミングスクール-egg コース・料金一覧」のページを参照ください。
むろん、eggのみならず、ご自宅の近くのプログラミング教室でも、またオンライン受講をする際にも、完全初心者の頃からしっかりとした教育を受けるというのは、上達への近道でもあります。
まとめ
今回は、子ども向けプログラミング検定について、おすすめの検定である「ジュニア・プログラミング検定」の応募要項、受験までの流れ、メリットや、そもそもプログラミングが必要とされている背景、そして本コラムの運営元であるeggの取り組みを紹介しました。
子ども向けプログラミングやプログラミング教育に興味のある方は、ぜひ本記事を参考にしてみてくださいね。